CFRPを詳しく知る(#3 CFRPの樹脂特性-熱可塑性樹脂)

CFRPを詳しく知る(#3 CFRPの樹脂特性-熱可塑性樹脂)

熱可塑性樹脂について

・加熱前後で同じ物質 A ⇔ A 可逆性
・結晶化度によって物性が変化
・分子鎖が絡み合って物性を発揮する

一般的に熱可塑性樹脂の方が伸びが大きく、
熱硬化性樹脂の方が剛性がある。
(もちろん例外もあります)

加熱して一番粘度が低い時を比べると・・・

熱可塑性樹脂はドロドロ

熱硬化性樹脂はサラサラ

  • 熱可塑性樹脂の方が熱硬化性樹脂よりも分子量が大きい、分子鎖が長いことによる。
  • 熱可塑性樹脂は加熱前後で化学的反応がない・・・炭素繊維と化学結合しない。
CFRPにすると熱可塑性樹脂の方が不利に感じるが、なぜCFRPに熱可塑性樹脂が使われるのか?

1. 成形の早さ

化学反応を伴わない熱可塑性樹脂は、プレスで高圧力で繊維に樹脂を押し込めれば、早く成形できてしまう。

2. リサイクル性の良さ

熱で融解する熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂よりもリサイクル性が良い

3. 形状加工性

加熱して樹脂を軟化させることで、曲げ加工等を容易にできる。

4. 熱可塑性樹脂が持つ特性

例えば耐衝撃性など

炭素繊維表面とのなじみが良い樹脂 = 基本的に「極性ポリマー

極性」とは

極性
分子中に電荷の偏りがある

非極性
分子中に電気的な偏りがない

極性ポリマーは

サイジングされた炭素繊維になじみやすい反面、空気中の水分を吸水しやすいため、乾燥工程を設ける必要がある

代表的な熱可塑性樹脂の種類

で囲った部分が極性基で、炭素繊維表面との親和性を有する。

ポリアミド(PA)/ナイロン

代表的なもの
・ポリアミド6(ナイロン6)
・ポリアミド66(ナイロン66)
・Lexterシリーズ(三菱ガス化学)

融解点  220~230℃
結晶化点 190~195℃
吸水率  約3.5wt%

融解点  265~275℃
結晶化点 約250℃
吸水率  約2.5wt%

PPS

融解点  約280℃

結晶化点 約220℃

・熱可塑性樹脂の中では耐熱性が非常に大きい。

・耐薬品性に優れる。(特にガソリン等のオイル類)

・引張強度、剛性が大きい

PEEK

融解点  約350℃

結晶化点 約305℃

・熱可塑性樹脂の中で、最高レベルの耐熱性、耐薬品性、引張強度、剛性を有する。
・耐放射線性に優れ、宇宙産業にも使われる。
・生体適合性があり、人工関節や人工骨にも使われる。

ポリカーボネート[PC]

融解点    約250℃の非晶性樹脂

ガラス転移点 約150℃

吸水率    約0.1~0.2wt%

耐衝撃性に富む・・・機動隊の盾や防弾ガラスに使われる。

ビスフェノールA骨格を持つので、ビスフェノールAエポキシ系サイジング剤との親和性が良いと推測される。

ポリプロピレン[PP]

融点       160℃程度

結晶化温度    110℃程度

ガラス転移温度Tg 0℃

比重は約0.9で、プラスチックの中で最も小さい

耐薬品性に優れる

非極性樹脂であり、炭素繊維表面との親和性が良くない

→マレイン酸変性させて極性を持たせものを、サイジング剤としてPPと混ぜて使用する。