熱可塑性樹脂について
・加熱前後で同じ物質 A ⇔ A 可逆性
・結晶化度によって物性が変化
・分子鎖が絡み合って物性を発揮する
一般的に熱可塑性樹脂の方が伸びが大きく、
熱硬化性樹脂の方が剛性がある。
(もちろん例外もあります)
加熱して一番粘度が低い時を比べると・・・
熱可塑性樹脂はドロドロ

熱硬化性樹脂はサラサラ

- 熱可塑性樹脂の方が熱硬化性樹脂よりも分子量が大きい、分子鎖が長いことによる。
- 熱可塑性樹脂は加熱前後で化学的反応がない・・・炭素繊維と化学結合しない。
CFRPにすると熱可塑性樹脂の方が不利に感じるが、なぜCFRPに熱可塑性樹脂が使われるのか?
1. 成形の早さ
化学反応を伴わない熱可塑性樹脂は、プレスで高圧力で繊維に樹脂を押し込めれば、早く成形できてしまう。
2. リサイクル性の良さ
熱で融解する熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂よりもリサイクル性が良い
3. 形状加工性
加熱して樹脂を軟化させることで、曲げ加工等を容易にできる。
4. 熱可塑性樹脂が持つ特性
例えば耐衝撃性など
炭素繊維表面とのなじみが良い樹脂 = 基本的に「極性ポリマー」
「極性」とは
極性
分子中に電荷の偏りがある

非極性
分子中に電気的な偏りがない


サイジングされた炭素繊維になじみやすい反面、空気中の水分を吸水しやすいため、乾燥工程を設ける必要がある
代表的な熱可塑性樹脂の種類
○で囲った部分が極性基で、炭素繊維表面との親和性を有する。
ポリアミド(PA)/ナイロン
代表的なもの
・ポリアミド6(ナイロン6)
・ポリアミド66(ナイロン66)
・Lexterシリーズ(三菱ガス化学)

融解点 220~230℃
結晶化点 190~195℃
吸水率 約3.5wt%

融解点 265~275℃
結晶化点 約250℃
吸水率 約2.5wt%
PPS

融解点 約280℃
結晶化点 約220℃
・熱可塑性樹脂の中では耐熱性が非常に大きい。
・耐薬品性に優れる。(特にガソリン等のオイル類)
・引張強度、剛性が大きい
PEEK

融解点 約350℃
結晶化点 約305℃
・熱可塑性樹脂の中で、最高レベルの耐熱性、耐薬品性、引張強度、剛性を有する。
・耐放射線性に優れ、宇宙産業にも使われる。
・生体適合性があり、人工関節や人工骨にも使われる。
ポリカーボネート[PC]

融解点 約250℃の非晶性樹脂
ガラス転移点 約150℃
吸水率 約0.1~0.2wt%
耐衝撃性に富む・・・機動隊の盾や防弾ガラスに使われる。
ビスフェノールA骨格を持つので、ビスフェノールAエポキシ系サイジング剤との親和性が良いと推測される。
ポリプロピレン[PP]

融点 160℃程度
結晶化温度 110℃程度
ガラス転移温度Tg 0℃
比重は約0.9で、プラスチックの中で最も小さい
耐薬品性に優れる
非極性樹脂であり、炭素繊維表面との親和性が良くない
→マレイン酸変性させて極性を持たせものを、サイジング剤としてPPと混ぜて使用する。