【news解説】西安交通大学の新技術:3Dを超えた4Dプリンター

【news解説】西安交通大学の新技術:3Dを超えた4Dプリンター

Xi’an Jiaotong university has made new progress in 4D printing of continuous fiber composite materials

4D printed structures can produce programmable shape and performance changes under external stimuli, so they have broad application prospects in aerospace, soft robotics, biomedical and other fields. However, the current 4D printing structures usually cannot take into account the large deformation capacity and mechanical load-bearing capacity, and cannot achieve multifunctional fusion.

JEC World 2023/07/27

読者の皆様は、4Dプリンターという名前を聞いたことはあるでしょうか。3Dは3次元、すなわち立体的形状を表す言葉ですが4D、すなわち4次元とはどういったものなのでしょうか。

4次元と聞いてすぐに思い浮かぶものは、ドラえもんの「四次元ポケット」でしょうか。四次元ポケットは3次元を無限に収納できる4次元空間ですが、これは数学的4次元の話です。

「物理的に見た4次元」とは、XYZ座標の3次元に加え「時間による変化」を加えた概念となります。ドラえもんであれば「タイムマシン」がこれに当たります。つまり、4Dプリンターとは3Dプリンターに「時間の変化」という要素を加えたプリンターとなります。

例えば形状記憶ポリマーフィラメントを使用することで、熱を与えると形状が変化し、常温に戻すと元の形状に復元するような製品を3Dプリンター技術で制作する技術になります。これにより、まるで気象衛星「ひまわり」のように、太陽の方向に合わせ受光面を移動させるトラス構造の太陽電池架台などが実現できるかもしれません。

しかし、現状はあくまで「環境に合わせた形状変化」に注目が集まる一方で、その機械的特性にまでアプローチした事例は多くはありません。

本記事では、中国の西安交通大学で開発された、優れた機械的強度を持つ4Dプリンター技術を紹介します。液晶ポリマーフィラメント内の「任意の位置」に連続繊維フィラメントを挿入することにより、液晶ポリマー造形品の変形方向と強度を制御する技術となります。

連続繊維強化液晶エラストマー複合材料の4Dプリンティング

4Dプリンティング技術は、物体が時間と共に形状や性能を変化させることを可能にし、航空宇宙やソフトロボット、バイオメディカルなど、多岐にわたる分野での利用が期待されています。しかし、このテクノロジーの現行の応用範囲は、大きな変形能力と機械的耐荷重能力のバランスを取り、多機能融合を達成するのが一般的に困難です。

これに対し、西安交通大学の研究チームは、新たなアプローチを提案しました。彼らは、液晶エラストマーのサーモクロミズム(温度変化による色の変化)変形能力と連続繊維材料の特性を組み合わせ、直接描画4Dプリンティング技術を開発しました。この技術では、液晶エラストマー複合材料の中に連続繊維が埋め込まれ、機械的特性の向上と曲げ変形の実現が可能となります。

この研究チームの印刷方法では、複合フィラメント内の連続繊維の位置を精密に調整することで、制御可能な耐荷重特性と変形形状を印刷構造に組み込むことができます。この手法で生み出された液晶ポリマー複合材料は、自重の2805倍の荷重を支え、150℃で0.33mm-1の曲げ曲率を達成します。
このプロセスによって製造された複合材料トラス構造は、耐荷重性と変形能力を併せ持ち、従来の4Dプリンティング構造の機械的耐荷重性能が低い問題を克服しました。

現代は、積極的に3Dプリンターを構造材へ適応させようという流れも加速しており、造形物の強度の担保は非常に重要な技術となってきています。本技術は3Dプリンターの新たな可能性の一つなのではないでしょうか。