CFRPを有効に使用するためには、適切な成形の条件を知ること、作ったCFRPを評価することが重要です。
ここでは、以下の考え方、手法について示します。
(1)成形条件を出す
成形条件の組立
成形条件は樹脂の熱特性、粘度、粘弾性を考慮して特定する。
1.温度特性
DSC(示差走査型熱量計)
熱硬化性樹脂の硬化反応時の発熱や、熱可塑性樹脂における融解温度、結晶化温度より成形条件を確定する。
- 硬化反応に伴う熱流を測定することで成形条件を決定
- 熱可塑性樹脂の場合は融解温度、結晶化温度を測定可能
- ガラス転移点の測定
- 比較的容易な手法であり、且つ応用の幅が広い
- アレニウス式の導入により、硬化度合いの評価や硬化条件の検討が具体的に実施可能。(DSC小澤法)




TG-DTA(示差熱-熱重量同時測定装置)
加熱下における重量と熱の変化をみることで、加熱下での化学・状態変化をみる。
使用を想定する温度範囲における資材や材料の発生ガス有無を見極める他、吸水率や乾燥工程の設定、未知の複合材の配合比やVfを目安づけることができる。
- 加熱下の重量変化(分解、蒸発、酸化、燃焼など)と熱の変化を調べる装置
- 分解やアウトガス発生など、資材の使用温度範囲を確認することが可能
- 湿気を吸う材料は、吸水率と乾燥温度の確認ができる
- 示差熱も分析できるが、DSCより精度は劣るため、過程の発熱吸熱の判断程度のものになる分解温度の差で未知の複合材の配合比やVfを算出可能



NEXTA STA

2.粘度
温度上昇による粘度低下、硬化に伴う粘度上昇から架橋温度を判断。
硬化度モニター
樹脂の硬化度をイオン粘度曲線から推定する

ポリマー硬化自動測定装置

DEA 288 Ionic
レオメータ
樹脂の硬化度をレオロジーから推定する


ARES-G2
3.粘弾性
温度上昇による粘度低下、硬化に伴う粘度上昇から成形温度を判断
一定周波数にて昇温しながら応力を加え、貯蔵弾性率と損失弾性率から
ゲル化点(tanδ = G”/G’= 1)を求める。
樹脂の温度-粘度曲線、弾性率からゲル化点を求め、成形スケジュールに反映する。
プリプレグに対応した機種があったり、廉価版からハイエンドモデルまであったりと、用途や予算に応じて選択できる。
試料をヒーターで加熱しながら周波数による正弦波力で応力を加え、応力と歪量から粘弾性特性を求める。これにより試料の粘弾性特性として、貯蔵弾性率:G’、損失弾性率:G”、損失正接:tanδ(=G”/G’)等の温度依存性や周波数依存性を測定することができる。
レオメータ―は液体に対し、DMAは固体に対し使われる。
レオメータ


ARES-G2
DMA(動的粘弾性測定)

DMA850

DMA 242 E
Artemis
一定周波数にて昇温しながら応力を加え、貯蔵弾性率とゲル化点*を求める。
(* tanδ = G”/G’= 1)
試料をヒーターで加熱しながら周波数による正弦波力で応力を加え、応力と歪量から粘弾性特性を求める。これにより試料の粘弾性特性として、貯蔵弾性率:G’、損失弾性率:G”、損失正接:tanδ(=G”/G’)等の温度依存性や周波数依存性を測定することができる。

成形中のモニタリング
・実際の成形時の状態を測定することで成型後の製品品質の判断材料とする
・次回以降の成型プログラムへ反映させる
硬化度モニター
各センサーをオートクレーブなどの成形用装置に導入することで、成形時における材料の実際の挙動を確認する。
- 硬化度モニター
センサーを成形品内部に入れた状態で成形をするとによって、実際の樹脂の硬化度を見極める。 - 各点の温度測定
・熱電対を製品に仕込むことで、実際の製品硬化中温度やばらつきを見る。
・雰囲気温度と製品温度の差をみて、成形プログラムに反映する。


(2)成形品を評価する
1.簡易検査
成形後、簡易的に品質を評価する
目視
表面ボイド、傷などを目視で確認、測定を行うことで品質規定以上を満たしているか確認する。
測定
成形品の厚みをマイクロメータ等で測定する。
→離形紙の取り忘れによる厚みの増加、樹脂の流出による厚みの減少等
すきまゲージを用いて成形品のゆがみ・ねじれを検査する。
→ミラー対象を守れていないことによるゆがみ
不適切な成形スケジュールによるゆがみ等
打音
内部ボイドの少ないきれいな成形品は金属様の高い音がする。
2.非破壊検査
X線CT | 超音波探傷 | |
---|---|---|
概要 | 炭素繊維、樹脂、ボイドのX線透過率の違い | 正常部と空隙部との超音波の反射の違い |
長所 | ・体積状欠陥(ボイド)等の検知が得意 ・複雑な形状でも検査可能 | ・面状欠陥(層間剥離等)の検知が得意 ・小型化による持ち運びが容易(現場検証) ・欠陥深さや高さの測定が可能 |
短所 | ・欠陥深さ位置や高さの検知ができない ・X線装置のため導入に届け出が必要 | ・体積状欠陥の検知能力に劣る ・複雑な形状の検査が難しい(乱反射) |
装置例 | 島津製作所 マイクロフォーカスX線CTシステム inspeXio™ SMX™-225CT FPD HR Plus ![]() | OLYMPUS OmniScan MX2 ![]() |
X線CTの一例
3.強度検査
実際の機械的破壊は、様々な応力モードが複雑に絡み合って発生する。
つまり、そこから破壊メカニズムを明らかにすることは難しい。そこで、様々な応力モードをシンプル化して強度の検証を行う。これが、破壊現象のメカニズムを推測するための「パズルのピース」となる。
引張試験
試験片を上下のチャックでつかんで引張り、破断の過程をみる。破断時だけでなく、伸びや時間と対応させて、破断するまでの挙動を測定する場合も多い。
CFRPでは、繊維強度の発現率*を確認する目的が多い。
(* CFRPに使用する炭素繊維の強度と、成形後のCFRPの強度の比較。)
曲げ試験
短冊形状の試験片を決められた治具上に橋掛けし、試験片が破壊するまで橋の中央を圧縮して曲げ、破壊までの過程をみる。CFRPでは、圧縮強度のほか、樹脂の強度やボイドの有無・多寡、積層のバラつきなどの要素が影響することがある。

圧縮試験
「キ」の字型の治具に試験片を装着し、試験片が破壊するまで圧縮する。積層の強度や繊維の座屈、せん断不安定現象等を対象とし、樹脂の強度の他ボイドの多少や積層のばらつきに影響する場合がある。

4.官能基による硬化度
FT-IR(フーリエ変換赤外分光光度計)
- 試料に赤外線をあてて得られる吸収スペクトルを測定する分析法。とりわけ有機化合物に有効。
- 分子に赤外領域のエネルギーを与えると、化学結合(長さ・角度)の振動が生じる。このとき、吸収された赤外線エネルギー量を測定することで、化学結合の種類(官能基)を知ることができる。
- 反応前後において、反応に関係する官能基のピークの増減を観測することで、硬化度合いを評価。
→エポキシ樹脂の場合、開環重合によるエポキシ基の減少と-OH基の増加 - 専用チャンバーとリアルタイムFT-IRを用いることで、硬化挙動を評価することも可能。

Nicolet iS 50

FT/IR 6000