【news解説】細菌を使用した新しい3Dプリント技術:バイオコンポジットインク

【news解説】細菌を使用した新しい3Dプリント技術:バイオコンポジットインク

Bacteria-loaded ink prints bone-like 3D biocomposites

When organic-inorganic composites are constructed in nature, two plus two can add up to more than four where the mechanical properties of the composite exceed those of the component parts. The secret to nature’s success lies in the ability to control the structure and local composition using compartmentalization of reagents. Inspired by nature, researchers from École Polytechnique Fédérale de Lausanne and the University of Cambridge have devised an energy efficient process that uses bacteria to produce bone-like porous CaCO3-based composites

Materials Today 2023/03/23

コンポジット材料と言えば、多くの人々が炭素繊維やガラス繊維を樹脂で固めたFRPを思い浮かべることでしょう。しかし、コンポジット材料はその定義から、「2つ以上の異なる材料を組み合わせたもの」として、私たちの身の回りに多種多様な形で存在しています。

ローザンヌ工科大学とケンブリッジ大学の合同研究チームが、特定の細菌「Sporosarcina pasteurii」を活用した、炭酸カルシウムの多孔質3D構造物を作成可能な新しい3Dプリンター用のバイオコンポジットインク「BactoInk」の開発に成功しました。

このバイオコンポジットインクのメカニズムは、3D出力されたインク内に含まれるSporosarcina pasteurii細菌が尿素をアンモニアと炭酸に加水分解し、これが溶液中のカルシウムイオンと反応して炭酸カルシウムを生成する仕組みを持っています。この技術は、自然界の力を借りて環境不可の少ない方法で新しいタイプのコンポジット材料を生み出すことができると言えます。

研究を率いたEsther Amstad氏は、「我々はマイクロゲルの特性を利用して、軽量の多孔質鉱物を3Dプリントする技術を開発しました。この新しいバイオコンポジット材料は、93wt%までの炭酸カルシウムを含む非常に硬くて頑丈な鉱物ベースの材料として形成されます」と述べています。

また、この技術の特筆すべき点は、その多用途性です。Amstad氏らの研究チームは、センチメートル単位の3Dプリント構造物を作成することができると説明しています。初期の応用例としては、セラミック工芸品の修復やサンゴの再生のための支持体が考えられています。さらに、技術の改良が進めば、損傷や劣化した骨の修復にも応用される可能性があるとチームは見込んでいます。 「我々は次のステップとして、このインクの生体適合性を高めるための研究を進めています。特に、アンモニアの副産物を発生させない新しい材料の開発に焦点を当てています」とAmstad氏は語っています。