JEC World2023の優勝者紹介:Fraunhofer / CETIM

JEC World2023の優勝者紹介:Fraunhofer / CETIM

2023年5月5日~7日にフランスのパリで開催された世界最大級の複合材料の展示会「JEC World 2023」にて、各部門の優勝者(技術)をご紹介します。

本記事では、

  1. Fraunhofer研究機構(ドイツ)
    -ハイブリット座席構造
  2. CETIM社(フランス)
    -可塑性樹脂によるクルーガー社のウィングフラップの製作

を解説します。

どちらの技術も、リサイクル性や生産性を考慮し、熱可塑性樹脂を用いたCFRTPの生産技術です。生産性向上や低コスト化はもちろん、昨今は世界的に環境負荷への認識が強まり、こういったリサイクルを考慮したCFRPの製造方法は、今後も盛んに研究・開発されていくものと思われます。

ハイブリット座席構造(航空宇宙-部品部門)

Fraunhofer
パートナー:Alpex Technology社(オーストリア)/
AMADA(ジローナ大学ポリテクニック校、スペイン)/ Leitatテクノロジーセンター(スペイン)

効率的な自動工程で生産される航空機のハイブリッド座席構造を、リサイクルしやすい軽量複合材を使用し、持続可能な基準で設計・実証しました

民間航空機のシートは、多くの材料と個々の部品から構成されており、そのほとんどがポリマーと金属の混合物です。そのためリサイクルは複雑で、分離しやすい金属部品のみが回収され、シートクッションやアームレストなどのさまざまなプラスチック部品は焼却または埋め立てられています。また航空機の全体的な効率を高めるために、シートは軽量でなければなりません。

このような複雑な要求に応えるため、以下のようなサステナビリティ基準に基づいた航空機用シートシリーズが開発されました。

・リサイクル可能なポリマー部品は全て1種類のポリマーで構成し、リサイクルを容易にする。
・機能統合型軽量設計によるシート部品点数の削減と軽量化の実現。
・連続生産に適したプロセスによるプラスチック部品の効率的な生産の実現。
・金属インサートとポリマーの接着を向上させるための有害なプライマーの排除。

上記を実現するために以下の材料と工程を使用しました。

・ポリウレタン(PU)は、固体部品、発泡体、接着剤などの材料として利用できるため、利用するポリマーとして選定されました。PUはすでに工業規模でリサイクルされている実績があります。
・炭素繊維強化プラスチックを使用し、機能をデザインに組み込むことで、シートの部品点数を減らすことができました。繊維の配置を工夫することで、必要な荷重ケースをマッピングすることができます。
・シートの内部構造には、高強度かつ超軽量な構造を製造できるウェットコンプレッション成形(WCM)プロセスを選択しました。
・シートの外側の構造には、シートモールディングコンパウンド(SMC)プロセスを選択しました。このプロセスは、クラスAの表面を持つ高強度部品を製造するために使用することができます。PUベースの材料は、SMCプロセス用に開発されました。局所的な補強を行うことで、特性を向上させています。
・脚を固定するために用いるベルトのための金属インサートは、プラズマ重合によって無害なナノポーラス接着剤層でコーティングされ、良好なPUとの化学的・機械的接着環境を構築しました。

本技術の主なメリット

・CO2排出量と廃棄物を削減する、サステイナブルなPUベースの軽量CFRPです。
・シート部品点数を大幅に削減したことで、メンテナンス性が向上します。
・自動大量生産技術(SMC/WCM)によるコストダウンを実現します。
・航空機用炭素繊維シートの経済的コストを低減します。

熱可塑性樹脂によるクルーガー社のウィングフラップの製作

(航空宇宙-プロセス部門)

CETIM HYPERLINK
パートナー:Loiretech社(フランス) / AFPT社(ドイツ) / SONACA社(ベルギー)

熱可塑性樹脂の自動化プロセスにより、現場で生産される革新的なクルーガーフラップ

このマルチパートナープロジェクト*を通じて製造された革新的なクルーガーフラップは、大きく複雑な形状をしており、現場にて熱可塑性樹脂圧密プロセスで製造されました。

生産性の向上、プロセスの安定性、複合材料の品質向上など、構造的・工業的性能の面で既存のプロセスを凌駕するものです。この革新的なプロセスは、その場で、硬化、オートクレーブなどの製造工程なしで工業化することができます。

本技術の主なメリット

・全自動プロセスによる原位置圧密(レーザーフィラメントワインディング)
・リサイクル性(熱可塑性樹脂部分)
・プロセスの再現性・信頼性
・製造コストの削減
・大型部品の量産化

*SWING欧州研究開発プロジェクトは、Clean Sky研究・イノベーションプログラム(H2020)の助成を受け、助成金契約番号:864453を取得しています。

出典