【news解説】Ant-X社とExel Composites社のドローン製造から見る、安定したCFRP製品製造

【news解説】Ant-X社とExel Composites社のドローン製造から見る、安定したCFRP製品製造

Composite profiles bring consistent quality to Ant-X drones

Italian drone solutions provider enlists Exel Composites to deliver pultruded and pull-wound profiles that support prototype drone structure designs.

Composites World 2023/08/21

ここ近年、CFRPが多く利用されている分野として、航空機などを始めとした輸送産業や、ゴルフクラブや自転車フレームなどを代表とするスポーツ分野などが思い浮かぶかもしれない。
最近では、ドローンへCFRPを使用する実例も増えてきた。特に1台何十万もする個人所有の最上位グレードなどは特に、CFRPが使用されている印象がある。

CFRPは重量に対する強度や弾性率が非常に高く、軽量が求められるドローン分野では非常に都合の良い材料であることは想像に難くないが、剛性が高いことによる操縦時の応答性の良さや、屋外で雨に晒されても腐らないという安定性も非常に魅力だ。しかしCFRPの普及を妨げる大きな要因があることはご存知だろうか。

CFRPは、オートクレーブ成形やプレス成形などのプリプレグを用いた高品質な成形方法から、レジンインフュージョン成形を始めとした「ウェット成形」と呼ばれるものまで、様々な成形方法が存在し、また成形業者によって品質に多少のばらつきが出ることも珍しくない。これは、金属のように規格で決められている材料を削り出すのではなく、成形業者それぞれが炭素繊維を積層したり樹脂を含浸させたりするためだ。
CFRPは、この性能の安定性や再現性が議論されることが多い。

本記事で紹介するAnt-X社は、Exel Composites社との独占契約により品質の再現性の高い同社の「引き抜き成形」をもって、CFRP製ドローンの品質の安定性を実現している。今後の発展性がより期待されるCFRPだからこそ、その素材だけでなく製造プロセスなどにも注目してみると面白いかもしれない。

Ant-X’sの遠隔操作ドローンAries。写真提供:Exel Composites

イタリア・ミラノ工科大学(PoliMI)の研究グループから生まれたスピンオフ企業Ant-X社は、ドローン技術の開発と商用化に特化しています。この企業は、PoliMIと密接に協力し、ドローンの設計、統合、飛行試験、製造の全領域で活動しています。Ant-X社の目標は、世界のドローン市場の拡大に伴い、カスタムドローンソリューションを提供することです。

Ant-X社は、特に複合材料に注目しており、CFRPなどの軽量で丈夫な材料が、ドローンの部品として適していると判断しています。これらの材料は剛性、耐久性、軽量性を備えているため、激しい風や雨などの厳しい環境下でも飛行性能を保持することができます。

しかし、Ant-X社は複数のサプライヤーからの複合構造ユニットの調達に問題を抱えていました。供給される炭素繊維コンポーネントの品質にばらつきがあり、信頼性の高い性能を持つドローンの製造が難しくなっていたのです。Ant-X社のCEO、Simone Panza氏は、供給の不確実性とばらつきが、会社のイノベーションと製品開発に影響を与えていると認識しています。

これらの問題を解決するために、Ant-X社は複合材料の供給を単一の調達経路に統合することを決定し、フィンランドのExel Composites社と独占契約を結びました。Exel Composites社は、複合材の専門家であり、Ant-X社のドローン構造設計をサポートする技術を提供することができます。

この協力関係により、Ant-X社は一貫性のある高品質のドローン製品を提供でき、また、Exel Composites社との連携により、バラつきや不確実性を低減し、会社のイノベーションと製品開発をさらに向上させることが期待されます。