【news解説】持続可能な未来へ:ESAが開発した100%バイオベースの宇宙用複合材料

【news解説】持続可能な未来へ:ESAが開発した100%バイオベースの宇宙用複合材料

High glass transition temperature, 100% bio-based thermoset resins for space composites

With the European Commission Restrictions Roadmap soon banning entire classes of chemical substances found in fossil fuel-based synthetic polymers, the space industry is looking to a chemical combination to produce competitive thermoset resins.

Materials Today 2022/12/21

ESA(欧州宇宙機関)は、コート・ダジュール大学ニース化学研究所(ICN)のアリス・ミジャ教授の研究チームと共同で、新しい100%バイオベースのエポキシモノマー及びバイオベースの無水物を開発し、宇宙用複合材料として石油由来のものと同等の特性を持つ熱硬化性樹脂の生成に成功したことが報告されました。

このモノマーは、藻類から得られるフロログルシノールのトリグリシジルエーテル(TGPh)であり、価格的にも手頃で、完全に再生可能です。TGPhを用いて製造された熱硬化性樹脂は、ガラス転移温度210℃、弾性率3.1GPa、熱安定性359℃、15日後の平均吸水率1.5%という特性を有しています。これらの特性は、アウトガス試験においても宇宙用複合材としての要件を大いに超えており、これにより本樹脂が宇宙産業での利用が期待されています。

宇宙産業においては、固体ロケットエンジンや燃料・ガス貯蔵用の圧力容器、ロケットノズル等に、高比強度、高ガラス転移温度、高弾性率、高熱安定性、低吸水率を持つ複合材が求められています。また、軌道上の宇宙船では、軽量で環境安定性が高いハニカム構造の複合材が利用されています。

宇宙産業の商業化が進む中で、ESAとニース・コート・ダジュール大学化学研究所は、100%バイオベースの複合材料構造の開発を計画しています。これにより、天然繊維の吸湿性の問題を解決し、繊維や複合材のコーティングによって内部の水分が外部に出ないようにする技術が研究されています。

本開発の背景には、欧州委員会のRestrictions Roadmapに基づく化石燃料由来の合成ポリマーの規制があり、化学物質の使用制限が進んでいます。この動きは、宇宙産業の複合材料の使用にも影響を与える可能性があるため、バイオベースモノマーの開発は、持続可能性の観点からも重要となっています。

この研究の成功により、宇宙産業においても環境に優しい持続可能な材料が導入されることで、今後の宇宙開発が更に進展することが期待されます。