CFRPの実態を捉える(#3 設計の考え方)

CFRPの実態を捉える(#3 設計の考え方)

CFRPの設計をするためには、新しい認識が必要になります。

  1. CFRPは複合材料である
  2. 積層設計をしないと強度が決まらない

1. CFRPは複合材料である

CFRPは、炭素繊維と樹脂の複合材料であるため、
金属などの単一の材料から構成されている材料とは大きく性質が異なります。

最も大きな特徴は「異方性」です。

異方性のイメージをつけやすくするため、
CFRPより身近な複合材料である鉄筋コンクリートを例に、その性質を見ていきます。

長手方向に鉄筋が配向された鉄筋コンクリートに対して、矢印の点と方向に力を加えた場合

Check

長手方向に鉄筋が効いて、鉄筋コンクリートの破壊が抑制される

鉄筋がなければ、簡単にコンクリートを脆性破壊するまでに変位して割れてしまうが、鉄筋によって抑制される。

同じ鉄筋含有量の鉄筋コンクリートに対して、長手方向に鉄筋が入っていない場合

Check

長手方向の鉄筋が効かないので、コンクリート並みの力で破壊する

鉄筋が同じ含有量の鉄筋コンクリートであっても、それが適切な方向に入っていなければ、全く違う物性を示すことになる。

・鉄筋コンクリートは鉄筋が効く場合のみ、通常のコンクリート以上の物性を示す。
・CFRPも同様に、炭素繊維が効く場合のみ、樹脂の変位が抑制されるため、通常の樹脂以上の物性を示す。

異方性材料とは、切り出す方向や部位によって異なる性質を示す材料のことです。

対象的に、金属材料のように、方向や部位に関係なく等しい物性を示す材料のことを
等方性材料といいます。

2. 積層設計をしないと強度が決まらない

CFRPは、標準的な物性を用いれば強度計算が出来る等方性材料とは異なり、
標準的な物性が定義できないため、狙いのスペックがなければ設計のしようがない。

材料の設計には、成形品の断面を層単位で分割し、各層の繊維配向を考慮して行います。
CFRPの成形は、シート状の材料を積み重ねて行うため、これを「積層設計」と呼びます。

CFRP設計の概略

・成形品がどのような力を受け、どのような環境で使用されるかを明確化
・最適かつ成形が可能な形状を決定し、狙いのスペックを決定
・そのスペックを満たすために、使用する繊維の選定、繊維配向を考える(コスト含め)

#3 まとめ

慣れ親しんだ等方性材料の設計とは異なり、積層設計が必須である。
積層設計をしなければ、その設計は絵に描いた餅となる。